鳴きまね名人ミヤマカケス

2021.11.02

秋も深まり、平地でもミヤマカケスが目立つ時期になってきた。
ミヤマカケスはカケスの北海道亜種である。頭部のオレンジ色が美しく、道外から来る鳥好きの人たちには案外人気がある。私も30数年前の秋、初めてこの鳥を見た時には「わーきれい!」と驚いた記憶がある。カケスと同種の鳥とは思えない華やかさが感じられた。オレンジ色やピンクも含め、赤系統の色彩は人目を引くものなのだろうと思うが、本州のカケス(亜種カケス)にはこの色がなく、目つきも鋭い。決して人気のある鳥とは言えないだろう。
しかし、亜種ミヤマカケスもカケスには違いなく、カラス科の雑食性の鳥であり、ジェーというだみ声も美声とは言いがたい。そのせいか北海道在住のバードウォッチャーからは、どちらかと言えば嫌われ者にされているように思う。
ただ、物まね上手という点ではミヤマカケスはなかなか面白い存在である。私も、その鳴きまね声には何度もだまされている。
ある時は「ミャ―」という猫の声に一杯食わされ、またある時は「ピー、ヒョロロー」というトビの声にもまんまと引っかかった。トビが円を描きながら飛んでいる声にしてはずいぶん低い場所から聞こえるなー、おかしいなー、と思って声のする方向を探してみると、ジェーとひと声鳴いてミヤマカケスが飛び立ったのだ。
「コロコロコロ、キョーン」というクマゲラの声が聞こえた時には、私は喜び勇んでクマゲラを探したものだ。その時も、最後はジェーッという本来のだみ声。じつにいまいましい。それ以来、ミヤマカケスの多い森では、クマゲラの声が聞こえても姿を確認するまでは信じないことにしている。
……と、まあ、こんな具合だが、裏を返せば、ミヤマカケスの鳴きまねがそれほど本物そっくりだということ。人間レベルでは聞き分けられないほど本物に似ているわけで、その卓越した技術には感嘆してしまう。ただ、最後は「ジェーッ」と自分本来の声を出して馬脚を現してしまうのがご愛敬。しかし、こうしてタネ明かしまでしてくれているかと思うと微笑ましく、愉快な相手に思えてしまう。憎めないヤツなのだ。

 

 

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