北海道らしい鳥クマゲラ

2022.03.01

北海道の野鳥の中でもクマゲラの人気は高い。私が主宰する「ウェルカム北海道野鳥倶楽部」では様々な形で北海道の野鳥に関する情報発信を行っているが、会員の方々から北海道で見たい鳥・撮りたい鳥として必ず名前が上るのがクマゲラである。最近はシマエナガが人気ナンバーワンだが、その次がクマゲラだ。特に、鳥のことをある程度知っている人、バードウォッチング歴のある人、鳥好きの人たちの間での人気は今もクマゲラがナンバーワンだと言える気がする。
カラスほどもある大きな体と黒い野性味あふれるその姿には、北海道そのものを感じさせる魅力がある。国内最大のキツツキがクマゲラであり、国内最大のフクロウはシマフクロウである。さらに、国内はもちろん、世界でも最大級のワシがオオワシである。いずれも北海道を代表する鳥たちであり、道外の人はこの”大きさ”に北海道らしさを感じているのだろうか。
これら大きな鳥たちの魅力について考えていたら、高校生の頃に生物の授業で習った「ベルクマンの法則」を思い出した。同系統の動物は分布が北のものほど身体が大きいという法則である。なるほど、それは国内の鳥にも当てはまるのだ。そして、そのことは、きちんと教わらなかったとしても誰もが何となく感じていて、だから、一番大きなキツツキやフクロウやワシに北海道らしさを感じ取っているのかもしれない。
私も北海道へ移住したばかりの頃はクマゲラには随分憧れたものだ。いや、今も憧れてはいるが、北海道で体験する何もかもが新鮮なうちは、クマゲラを見ること撮ることには格別な喜びを感じた。大きいのは体だけではない。「コロコロコロ…」と鳴きながら飛んできて木にとまったとたんに出す「キョーン」という声も大きい。「ドロロロロロロロロロ…」というドラミングの音もでかい。大きな鳥だけあって動作の一つ一つが大きいのだ。それらのすべてが北海道らしさのように感じていた。
さて、ここで、クマゲラは国内では北海道だけにいる鳥だと思っている人に、じつはそうではないという事実を伝えておいた方がいいかもしれない。東北地方北部(青森県・秋田県など)にも分布しているのだ。それだけではない。古い文献を調べれば、江戸時代には仙台、会津、日光などにも生息していたことがわかる。本州の個体は、おそらく、明治時代以降に様々な開発行為によって棲みかを奪われ絶滅してしまったと考えるのが妥当だろう。青森県の白神山地の個体群も、今は風前の灯火のような生息状況だと聞く。
つまり、北海道はクマゲラにとって国内最後の楽園であり、本州各地と比べればそれだけ開発行為を免れてきた大地だということなのかもしれない。その意味でも、クマゲラが北海道を象徴する存在であることは揺るぎない事実なのだと思う。

 

 

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