可愛いユキホオジロ

2021.01.06

ユキホオジロは可愛い。昔から図鑑などで写真を見る度にそう思っていた。白い顔に黒い瞳。頬を橙色に染め、嘴もみかん色のおちょぼ口。まるで「おかめ」か「おてもやん」みたいなイメージだ。

この可愛さもさることながら、全体的に白く清楚なイメージが魅力で、その名の通り雪原に映える。冬の北海道を象徴する鳥として、写真で見るだけでなく、自分の目で直接見て、撮影してみたい。そんな思いを募らせながら、ユキホオジロとの出会いを果たすまで、気が付けば20年が過ぎていた。
図鑑などには、北海道では全域の海岸草原や原野などに少数が渡来する、などと書かれている。北海道で暮らせば冬には見られるだろうと安易に考えていたが、甘かった。北海道暮らし30年間で思い知ったのは、ユキホオジロはそう簡単に見られる相手ではないということだった。

ユキホオジロがいるのは「海岸風衝地」である。つまり常に強風にさらされる場所であり、北海道の中でも極寒といえる厳しい自然環境に身を置いて待ち続けなければならない。夏には原生花園となって花が咲き乱れる環境だが、冬には一転して人を寄せ付けない凍てつく荒野となる。人間にとっては、そもそもそういう場所へ行くこと自体が困難であり、下手をすると猛吹雪に巻き込まれ、吹き溜まりに車が突っ込んでしまう可能性だってある。さらに車を停めてから先、風雪の中を相当歩かなければ目的地に到達できない。ユキホオジロがいる場所は、そんな場所がほとんどであろう。

そこで浮上するのが、雪の少ない道東である。釧路・根室地方にはユキホオジロが好むハマニンニクが大群落を作る海岸草原はあちこちにあり、しかも、基本的に積雪が少ないから、気温は低く風は強くても遭難する危険はかなり軽減される。かくして、ここ10年ほどは冬にはユキホオジロを求めて道東へ行くことが定例化した。その結果、ユキホオジロの可愛い姿に毎年のように出会え、撮影もできるようになった。

私のおススメは「ユキホオジロを見たいなら冬の道東へ」だ。ただし、十分な防寒対策は不可欠であり、危険を感じたら無理をしないように。これが鉄則である。

余談ながら、野鳥専門誌『BIRDER』1月号に、小生が撮影したユキホオジロの巻頭グラフが10ページにわたって掲載されているので、機会がありましたらご覧ください。

 

 

バードコラム一覧に戻る

ページトップに戻る