塘路湖のアオサギ

2021.03.12

私が東京から北海道へ移住してきたのは32年前のことだ。移住当初、季節感の違いはもちろん色々感じたが、鳥で言えば東京では冬鳥だと思っていたものが北海道では夏鳥ということがよくある。例えばアリスイやベニマシコ、アオジ、チュウヒなどが好例だ。

アオサギの場合、東京では留鳥で冬にもよく見るが、北海道では夏鳥であり、冬には基本的に見かけなくなる。夏鳥が北海道に渡来する時期は種によってまちまちだが、4月下旬から5月頃に渡来するものが多い。そんな中でアオサギの北海道への渡来は早く、だいたい3月中旬頃だ。
ある年の3月17日。雑誌の取材で塘路湖を訪れていた私は、湖上の大部分を覆う雪氷の上に、20羽ほどのアオサギを見つけた。渡ってきたばかりと思われたが、既に目先や嘴基部はピンク色で婚姻色が出始めている。東京で冬に見る姿とは比較にならないほどあでやかだ。夏羽のアオサギがこうして雪原にたたずむ姿はこの時期ならではの情景だと思った。

渡りという長旅を終えたばかりでも間もなく巣作りに入るはずだ。今は、旅の疲れをいやすほんの束の間の安らぎなかもしれない。
アオサギの後ろには、ひと冬をここで過ごしたオオハクチョウの群れが見える。彼らもまた、間もなく北帰の旅を始めるだろう。
3月の釧路湿原・塘路湖は、冬と春が交錯する美しいシーンを見せてくれていた。

 

 

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