早い夏鳥アオジ

2021.04.21

4月は、鳥たちの渡りの季節の真っただ中だ。
北海道では春の渡りは水鳥や草原性の鳥から始まり、森林性の鳥は概して渡来が遅い。例えば森の人気者であるオオルリやキビタキなどはゴールデンウィークの頃にならないと姿を見ることができない。
しかし、森の鳥としては早めの4月中旬頃までに渡って来るものもいる。ホオジロ科の小鳥・アオジだ。数の多い鳥だが、黄色と黄緑色に彩られ、よく見るとなかなか美しい。ゆっくりしたテンポで「チッチョッ、チュー、チリリ」とさえずる控えめの声にも好感が持てる。だが、数が多いせいか、観察者に顧みられることはあまりないのではないか。そう考えると少々気の毒に思えてくる。

何年か前、弟子屈のちょっとした森を歩いていた時のこと。歩き疲れた私は小さな渓流のほとりで切株に腰を下ろしてしばしの休憩を取った。清々しい空気の中、瑞々しい新緑が目に優しい。どこからともなくアオジの優しいさえずりが聞こえ、じつに心地よいひとときを過ごすことができた。

しばらくして、ふと、樹上から1羽の雄のアオジが降りてきたことに気づいた。私がじっとしていると、アオジは渓流の端のささやかな水たまりに躊躇なく飛び込み、水浴びを始めた。水は、まだ雪解け水の名残でかなり冷たいはずだ。けれど、アオジは気持ちよさそうに頭から水に潜り込んだり翼を細かく振るわせたりして気持ちよさそうに浴びている。

その時、私が見た鳥はそのアオジだけ。しかし、なぜか私まで身も心も清められたような気分になり、すっかりリフレッシュさせてもらった。こんなささやかな鳥との出会いもいいものだと、心から思った。

 

 

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